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本川良です。生活綴方教育に刺激を受け、その後『学び合い』の考え方に出会いました。 「「教室・学校と地域コミュニティ」について考える日々です。「お互いが尊重し合う関係の中でこそ,人はそれぞれの強みを発揮できる。」と考え、まずは足下から緩やかにチャレンジします。ホワイトボード・ミーティング®認定講師、日本イエナプラン教育専門教員資格認定。現在は福島県磐梯町教育委員会教育再デザインセンターに所属しています。

■想像力

 国語で、パラリンピックのことを扱った説明文を学習しました。国語的なスキルで考えると「要約」がその中心になります。
 一方で、その説明文が伝えたいメッセージを受け取ることも大事な学習だな、と思っています。その説明文のまとめには
「さまざまなしょうがいのある選手が、きびしいトレーニングをつんでいどむパラリンピック。それは、人が持つ多様さをみとめ、だれもが平等に活躍できる社会の実現を目指すためのものなのです。」
とあります。

 しょうがい、とは何か?
 多様さって?
 平等とは?
 活躍、というと?

 こんなことも、子どもたちとやりとりしながら学習する時間はなかなか楽しいです。よい機会でもあったので、地元の社会福祉協議会からボッチャのセットをお借りして、何回か全校でその体験もしてみました。

 学校には、車椅子があるな…と思っていたのですが、幸いそれは具体的な場面で使われることはほとんどありませんでした。
 「車椅子にずっと乗って生活したら、どんな感覚になるのかな…」
とある方が漏らした言葉にはっとして。

 せっかくだから、それ、やってみることに。

 子どもたちは、やはり車椅子に乗るのは「非日常」だから、
「やったー!乗りたい、乗りたい!」
になります。当たり前ですね。
「うん、試してみなよ。でも半日、車椅子生活ね。」
「え!?半日!」
 そんな感じで、車椅子体験ウィークが始まりました。

 学校の校舎はもう随分古いので、全然バリアフリーではありません。バリアだらけ。教室の入り口は車椅子ギリギリだし戸のレールでさえ乗り越えるには、子どもならけっこう勢いを付けないといけません。
「うー、筋肉痛になるー」
らしいです。
 
 トイレにしてもそう。入るまでに段差ありまくりです。一人では入れません、当然、中は補助具もないので用を足せないことに気が付きます。(トイレに入るときは、車椅子を降りてもOKにしました、さすがに)

 結局、半日車椅子、なんてことはできずにせいぜい2時間がいいところでした。でもそれを交代交代して繰り返し体験するウィーク。少人数学級ならでは。

 そうこうしていると、子どもたちの中でちょっとセンサーが発揮される場面が多くなってきました。例えば、鉛筆が床に落ちたときに
「あ?拾う?」
って声をかけたり。車椅子だと拾えないんですよね、前につんのめりそうになりますから。
「あ、ごめん、ちょっと押してくれる?」
なんて車椅子の子が声をかけることもあります。
 床においたホワイトボードに文字を書く活動の時には、他のメンバーがホワイトボードを立てて支え、書きやすくするとか、そんなふうにしてみたり。メンバーもまた、車いすに何度ものって過ごしたので、その困り感が想像できるのでしょう。自分たちも同じような体験したから。

 「想像力を働かせる」というのが、学力の大きな柱でもあると私は思うのです。そしてそれは様々な体験をし、お互いに言葉を交わす中で育まれるものだとも思っています。体験と言葉で自分の世界を広げていく営み?みたいな。
 もちろん全てを体験できる訳ではありません。だから一つの体験を、似たようなことと対比類比しながら想像してみる、次の行動につなげてみる、そこで得た経験もまた「体験」として積み上がっていく、そんなイメージ。
 想像力を働かせてみた、働かせることで気が付いたことがあった、誰かに喜んでもらった…それもまたその子に自信にもなっていくだろうな、と思います。

 未だ車椅子は彼らにとっては、「非日常」であり、しばらくしたら「乗りたい!」にはなると思います。でもきっと以前よりは、何かの場面で想像力を起動させるきっかけになるんじゃないかな、と思います。

 後は
「目に見えない、見た目で分からない、しょうがい、ってあるよね?」
って問いかけもいるな…と思いました。
「そもそも、しょうがいがあるとかないとか、どこに区切りがあるのかな?」
「違いはなんだろう?」

 いやあ、私も分からないことだらけ。子どもたちと一緒に考えていかないとな、と思います。