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本川良です。生活綴方教育に刺激を受け、その後『学び合い』の考え方に出会いました。 「「教室・学校と地域コミュニティ」について考える日々です。「お互いが尊重し合う関係の中でこそ,人はそれぞれの強みを発揮できる。」と考え、まずは足下から緩やかにチャレンジします。ホワイトボード・ミーティング®認定講師、日本イエナプラン教育専門教員資格認定。現在は福島県磐梯町教育委員会教育再デザインセンターに所属しています。

■あそび心

■あそび心

 雄勝は硯石の産地。ですが、実際の毛筆の学習では、作品を仕上げるための時間を確保するため?硯で墨をする、という時間を割愛している場合がほとんどです。私自身もそうしてしまっていたなあ、という思い。

 先日、雄勝硯の職人さんの工場にいっていい雄勝石を使った硯で墨をすらせていただいたらなんとも気落ちがよくて。自分が子どものころには、習字の時間にはたしか墨をすることもあったんですが、その時は
「めんどくさー」
程度にしか思っていなかったけれど、今回は
「あ…気持ちがいい…」
って思ったんですよね。

 そんなこともあって、先日の習字の授業の時には、
 「雄勝の子どもたちだから, 雄勝硯で墨をすることをしてほしいなあ。」
と思ったので、その時に購入したマイ雄勝硯を教室に持ち込みました。ついでに他店で買った「鈴鹿の墨」も笑。


 子どもたちに交代交代ですってもらうと、
 「え?なんか、なめらか…」「とぅるっとぅるっな感じ!」
雄勝硯でのすり味を、そんなふうに言っていました。

 子どもたちが持っている硯(今は「軽い」という機能性だったり、実際には授業でほとんど墨をすらない現状から「墨汁の器」としてのプラスチック紙の硯が教材になっているんですが)とすり比べてみると、気持ちよさが全然違います。

 その時の習字の時間は、「墨をすること」「雄勝硯」に出合い直す、そんな時間だったりしたんです。さわり程度、ですけど。


 そんな流れの中の、この日の図工は「墨で表す」。墨つながりの波があったので、この時期に前倒して実施。


 来週、みんなで大きな作品を作る前に、いったん
「墨であらわすってどんな感じかな?」のお試し。

 水の量、紙、道具の違いで、どんなふうに味わいが違うかをいろいろ確かめてみる、そんな時間でした。
「実際には、墨の違いもあるんだって。墨によって色合が違うらしいよ。」
って言ったら、
イカスミではどうですかねえ?」
なんていう…。でも面白そう、試してみたいな笑。

 筆だけでなく、刷毛、ガラス棒、ブラシ、布、いろんな道具と水の含ませ具合なんかでいろんな線や形、にじみが出て面白い。使う紙によってもそれらは変わりますし。
 「指や手の平だって、道具でもあるよね~」
なんて私が言うものだから、そのあたりから手や足に墨を付けて、形や絵を作ってみたり。
「こんなふうになった!」「これって○○みたい!」
などとみんなで真剣に、時に笑いながら活動しました。


 手や足が真っ黒になることだって、楽しい(^^)。高学年だって、そんなふうにもしたいよね、とわいわいやっている子どもたちを見ながら思いました。

 若干、はめを外しそうになる瞬間もあったんですが、ぎりぎりのところでバランスをとって、そこで野暮な「注意」はしないで済んでよかったです笑。

 

 やってみて思ったことは、案外教師って「ねらい」を強く意識しすぎると、それに縛られて、その時だけでその場面だけどそこに辿り着こう、辿り着いたことにしてしまおう、なんて思ってしまってしまうかもね、と思いました。

 今回の件で考えると、活動のねらいは「水の量、紙、道具の違いで、どんなふうに味わいが違うかをいろいろ確かめてみる」でした。

「まあ、こういうことが目的で、次回はみんなで共同作品をつくって楽しみたいんだよね。だから、今回はその時に活かせるようにいろいろ、こんなことをお試ししてみてほしいんだ。」
 「まあ、とりあえず、今までは墨で字を書いていたけど、今回はその他の表現を楽しんでみてよ」
で始めました。

「お試し」というあそびの言葉。最近はけっこうこの言葉が気に入ってよく使っています。
「まあ、いろいろ試してみてよ。」
みたいに。
 もちろん教師側のねらいはあるんだけど、「作品」(結果)をつくる、それも教師側の設定した時間内に、意図したようなそれ、みたいなところが強く出過ぎると、「お試し」というあそびの部分が削られがち。

 あそんでいる内に、けっこう自分たちで気が付いていることも多いみたい。
 見ていると、
(なんじゃ?それ面白い!)
ってことをし始めたり、作り出したりするから、
「え?それどうやったのーーー?」
って聞きたくなってくる。


 いろんな道具や紙や、最後には手とか足とかも使って墨で遊んでみたんだけど、結構盛り上がっていたなあ。6年生でも、足の裏とか墨を塗るの、楽しいんだあ、そりゃあそうかあー…なんて思った。
 彼らの満面の笑顔を見るのは、単純にうれしい。


 散々そうやってあそんだあとは、またそれぞれいろいろ試し出したりするし。
そういうのって交互にもくるのかもな…なんて思ったり。


 あまり縛らない、縛られない、それが遊びかなー。
何に縛られるか?いろいろ。

 無目的と目的、公と私、その間を自在に言ったり来たりする感覚。それが「あそび心」かな?そんなことを、子どもたちには教室で体験して味わって欲しいんだなあ、とあらためて自分で感じたり。

 なかなか楽しい「墨で表す」の時間だったなー。

 

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