次の場所へ行こう

本川良です。生活綴方教育に刺激を受け、その後『学び合い』の考え方に出会いました。 「「教室・学校と地域コミュニティ」について考える日々です。「お互いが尊重し合う関係の中でこそ,人はそれぞれの強みを発揮できる。」と考え、まずは足下から緩やかにチャレンジします。ホワイトボード・ミーティング®認定講師、日本イエナプラン教育専門教員資格認定。社会教育士。現在は福島県磐梯町教育委員会教育再デザインセンターに所属しています。https://note.com/bandai_gradation/

■「低温熟成」

■「低温熟成」

 6年生。

 今年度の卒業アルバムは、業者さんにお願いしないで、いわゆる台紙型のアルバムを使っての自作タイプのものにしている。
 今、制作が始まった段階。この日は、これまでの6年間の膨大な写真の中から自分や自分たちで選んだ写真を学年ごとに振り分けながら台紙に貼っていく作業。
 自分オリジナルな写真もあれば、みんなと一緒に
「これにしよっ?」
と共通写真もあったり。

 まあ、4人学級だからこそできるのかもしれない、そんな活動。


 今年はコロナウィルスのこともあり、大きなイベントごとは制限があった年になった。残念なこともあったけれど、反面、日常って大事だね、日常ってもっと楽しくすることもできるね、できたね、を感じることもできた年とも言える。へき地小規模の学校の特性を活かすことや多くの方々のお力添え、ご協力があったことももちろんそう。

 
 オリジナルマイ卒業アルバムづくり、つくる過程そのものを楽しむ、入学時からの膨大な写真を見ながらの「思い出トーク会」、そこからの写真選び、そしてできあがったプリント写真を台紙にレイアアウトしながら貼っていく作業。今までのこと、6年生になってからのことをゆっくりゆっくり、そしてわいわいおしゃべりを楽しむが如くするのがねらい、といえばねらい。「低温熟成のじっくり振り返り」みたいな感じ。


 「卒業式」だけに一点集中せず、日常の流れの中でこれまでとこれからを、つなぐようにしていきたい、いけたらという思い。むしろ、そういう「低温熟成」みたいな方が「卒業式」もまたより意味あるものにもしていけるんじゃないかな?というのもあるし。
 小中併設校だからそれもしやすい。


 コロナ禍で大きな行事がなかなか制限が大きかった今年度に合わせた(というんじゃないけど)みたいな、そんな卒業式までのプロセスつくりの1つ。
 考えて見れば、あたり前の日常の大切さを感じた1年だった。だからこそ、こんな卒業アルバムつくりのプロセスにしたのかもしれないな。
 今年は地域と協働の運動会もできなかったし、文化祭も今までのように多くの方々に来ていただく形ではできなかった。残念なことも多かったけれど、よかったこともある。
 例えば、地域に出掛けることが少なくなったからこそ、地域の伝統文化である神楽 にたっぷり練習の時間をとることができた。
「練習をしていくなかで…」
「3,4年生が新しく舞台に立って踊っているのを見て自分もやっているような気持ちになって…」
など子どもたちの言葉や姿からは、例年以上に神楽そのものや教えてくださった師範さん方への思いも高まっていったと感じる。

 困ることもあればよいこともあるものだ。


 今年はできなかったとしても、6年間を振り返れば、運動会だって、多くの人との交流だってもちろんあったし、そういうことの土台があっての今の毎日でもある、そんな感じだ。
 こうして、オリジナルマイアルバムをつくって「6年間の自分たちの思い出」をつくっていると「運動会」「文化祭」、その他様々な思い出だってちゃんと1冊に入ってくるじゃないか、と思う。
 
 コロナ禍とはいえ、この1年だって自分は、自分たちはけっこう充実してやってこれたじゃないか、うまくいったこともいかなかったこともあったけれど、それでもやってこれた、やってきた、そんな感覚をみんなで確かめ合う、そんな時間にこのアルバムつくりもなるといいな、と思う。


 自分が選んだ自分の思い出の写真、自分たちで選んだ自分たちの思い出写真、それ貼り合うこの時間もまた思い出になるといい。


 この日の帰りの振り返りは、
「卒業アルバム、写真貼りやってみてどうだった?」
「特に心に残ったことは?」
「どんなアルバムにしたい、なるといい?」


 そこでも、また感情の共有。

 そんな小さなプロセスを積み上げていく。

 来週は3月になる。
 低温熟成の3月に。
 
 発酵は熱が持続するのだ。

 

 

f:id:motoryou:20200309130006j:plain